研究会主催 「2018研修会」講演情報 名古屋

アドバイザリースタッフ研究会主催「2018年春期研修会」の講演概要を公開いたします。

 

4月8日(日)名古屋 会場

演題1 「未病者の臨床検査値の読み方について」
鈴鹿医療科学大学 森下 芳孝 先生

Ⅰ.基準値及び基準範囲の適用について
(1)基準値及び基準範囲について
近年は「正常値」や「正常範囲」に代わって、「基準値」とか「基準範囲」といった用語が用いられている。これは、「正常」という用語は、一般市民に誤解を招き易いからという理由である。つまり、得られた測定値が「正常範囲から外れていると自分は異常(病気)である、また逆に、正常範囲に入っているから異常ではない(正常である)」と誤解してしまう。それを避けるためである。
(2)共用基準範囲について
1992年アメリカ臨床検査標準協議会は基準範囲の設定方法の指針案を打ち出し、以降、日本国内でもこの指針に従って基準範囲が求められている。2011年、日本臨床化学会及び日本臨床検査技師会が中心になって、健常成人約6400人を対象に主要72検査項目について基準値測定を行ない、最終的に40項目について、日本の「共用基準範囲」を示した。国内の医療施設で共用できる基準範囲であり、現在、普及しつつある。
(3)小児及び高齢者の基準範囲
基準範囲は健常な成人から得られた数値であり、小児や高齢者にそのまま適用することはできない。小児では、新生児期、乳幼児期、その後の急激な成長、そして思春期には性的な成熟があり、体液成分にも生理的な変動が認められる。一方、高齢者では各個人の生活の質(Ability of daily living, ADL)によって基準値は大きく異なる。加齢及びADLの低下とともに肝機能、腎機能、肺機能、免疫機能など様々な臓器の機能低下がみられる。
(4)集団の基準範囲と個人の基準範囲
基準範囲は健常人集団から得られた基準範囲であるため、各個人の生理的変動のほか、個体間の変動も含まれる。一方、個人の基準範囲(個人が健常な生活を送る中での生理的変動幅)は集団の基準範囲より小さいのが一般的である。このことは、自身の測定値がたとえ集団の基準範囲内であったとしても、経日的にあるいは経月的に高値または低値の一定方向に推移しておれば、何らかの異常が発生していると考えられる。病初期を捉える際には個人の基準範囲を健診等で把握しておくことが効果的である。

Ⅱ.臨床検査値の読み方
1.特定健診と臨床検査値
40~74歳の全国民を対象に「特定健康診査・特定保健指導」が国の施策として2008年4月から実施されている。健診の目的は、内臓脂肪肥満や糖尿病、脂質異常症、高血圧症などの未病者を選出し、保健指導にて生活習慣を改善し治療することで、心筋梗塞、脳卒中、腎不全といった重篤な疾患の発症を抑えようというものである。健診の概要及び実施される臨床検査データの読み方を簡単に述べる。

2.注目すべき臨床検査値
(1)ヘモグロビンA1c(HbA1c, グリコヘモグロビン)
我が国のHbA1cの測定値は、数年前までは日本糖尿病学会推奨値(JDS値)で表記されてきた。しかし、我が国以外の多くの国々ではNational Glycohemoglobin Standardization Program (NGSP) 値による表記が用いられ、現時点でNGSP値が事実上の世界標準となっている。JDS値とNGSP値との関係は、NGSP値(%)=1.02×JDS値(%)+0.25%であり、JDS値で5.0~9.9%では、NGSP値(%)=JDS値(%)+0.4%である。
(2)LDL-コレステロール(LDL-C)とnon-HDLコレステロール(non HDL-C)
日常、LDL-Cは検査室で測定されているが、日本動脈硬化学会はFriedewald式
(LDL-C = TC - HDL-C - TG/5)による算出を提示している。但し、TG値が400mg/dlを超える場合はそれを適用できない。そこで、動脈硬化性疾患予防ガイドライン(2012年版)では、400 mg/dlを超えるような高TG血症の場合には、LDL-Cの代わりに、総コレステロール(TC)からHDL-Cを引いたnon HDL-Cを評価項目としている。
(3)慢性腎臓病(CKD)と推算GFR(eGFR)
CKDの診断には、腎機能を示す糸球体ろ過量(GFR)測定が必要である。一定時間に血漿中の物質Xが尿中へ排泄される除去率を腎クリアランスCx (ml/分)という。物質Xの血漿(血清)中濃度をPx(mg/ml)、尿中濃度をUx(mg/ml)、一定時間に排泄された尿量をV(ml/分)とすると、Px×Cx = Ux×V となる。従って、Cx(ml/分) = Ux ×V /Pxで示され、尿細管での再吸収や分泌がない場合にはCxはGFRを示すことになる。
GFRのゴールドスタンダードはイヌリンを用いたイヌリンクリアランス(Cin)であるが操作が煩雑なことや静脈注射を行わねばならないなどの問題がある。近年は、血清クレアチニン濃度Pcr(mg/dl)と年齢、性別から算出するeGFRが代用されている。
eGFRcr(ml/分/1.73m2)=194×Pcr-1.094×年齢-0.287(女性の場合は×0.739とする)

3.病態を反映しない異常値例の紹介
病初期を捉えるには、境界値の読み方が重要になる。その際には、生理的変動、技術的変動はどの程度かを考慮する必要がある。また、採血手技や検体取扱い不適切による異常値出現も時に発生する。生理的変動や異常値を示した症例について解説する。
(1) 血糖値20 mg/dl以下が3日ほど続くが、低血糖症状が見られなかった例
(2)透析患者のHbA1cは偽低値を示すという例
(3)溶血はしていないのに血清Kのみが異常高値を示した例

演題2 「アドバイザリースタッフに必要な栄養学の基礎知識」
大手前大学 健康栄養学部 管理栄養学科 吉澤 みな子 先生

厚生労働省は、「平成28年簡易生命表」の概況を公表し、2016年の日本人の平均寿命は、男性80.98歳、女性87.14歳で、いずれも過去最高を更新した。国際比較では、男女ともに香港に次いで世界2位となり、トップクラスである。また、健康上の問題がなく日常生活を送れる「健康寿命」は、男性が72.14歳、女性は74.79歳であった。3年前の調査と比較すると、男性が0.95歳、女性が0.58歳延び、平均寿命との差は、男性8.84歳、女性12.35歳となり、その間は介護などの手助けが必要になる可能性がある。
一方、平成27年度の国民医療費は、42兆3664億円で9年連続過去最高を更新している。つまり、国民医療費を削減させるには、平均寿命と健康寿命の差を短縮させなければならず、一次予防が推進されている。私たちアドバイザリースタッフが、消費者に対して保健機能食品などについて、専門的観点から適切な情報を提供することが、消費者自らが自分に適した食品を選択することに繋がり、健康増進に寄与することが期待されている。そのためには、栄養学の基礎知識が必要不可欠であり、今回は、「口腔のはなし」、「消化のはなし」、「コレステロールのはなし」、「三大栄養素のはなし」、「腸肝循環のはなし」を中心に解説する。また、私が以前に行った「骨粗鬆症による骨折と栄養」の研究について触れ、骨密度の測定なしで簡単に誰でも利用できる「10年間の骨折リスクを予測するツール(FRAX)」を紹介する。
本講演では、アドバイザリースタッフに必要な栄養学の基礎知識について解説し、消費者の健康増進の一助になれば嬉しく思う。

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